置き碁・指導碁について
関連項目
『はじめて棋譜並べに取り組まれる方へ』(一つ上に移動)
『囲碁・オセロ板』(トップページ)
『頻出三々定石と死活』(同レベル)
『次点となり、取り上げなかった定石たち』(同レベル)
置碁
四子局以上の置碁については「天下四目 上」、「この世から置き碁をなくそう 上」(絶版)といった星に小ゲイマ受けの解説が詳しい棋書で研究するのがいいと思います。
KGSの置碁棋譜を見る限り一間受けと小ゲイマ受けだと、黒番勝率に明確な差異があり、一間受けは下手不利だからです。
・小ゲイマ受けはもともと変化が少なく、そのうちアマの実戦に出てくるものはさらに絞り込まれます。
・一間受けを選ぶと置碁定石や三々打込み、横ヅケ、大々ゲイマへの打ち込み対策など
前提知識が急激に増えると思います
・一間バサミも皆が三々入りしてくれるわけではなく、「定石とヨセ」に出てくる両ガカリ対策のほかにも、
頻度が少ないだけに身に付きにくい一間トビ出しやツケ引きなどがあり、
いろいろ勉強することになると思います
・ツケノビ定石は級位者にはいいところが一つもない最悪の定石だと思います。
基本定石事典(下)を読めばわかりますが、ツケノビは変化が多すぎます。
昔の棋書は必ずツケノビ定石を解説しており、それは二間高バサミ、三間高バサミなどの両ガカリへの変化を含む
ハサミ方を考えた時にツケノビの応用範囲が広いからという配慮からだと思うのですが、
級位者には吸収・咀嚼するのが大変だと思います。
古い定石書はツケノビを取り上げておきながら、細かい説明をさらっとすましていて、お奨めできません。
下手は石を置かせてもらっているのだから、せめて自分の着手は簡明を旨とし、少ない変化に十分習熟するのが上達の近道と思います。また、ほとんどの人にとって囲碁はアソビなんですからあまり勉強しないで楽しめればそれが一番いいと思うのです。
小ゲイマ受けで隅を地にすることができれば最小効率で置石一子分(=13目)分の地が確定するので、ハンデをそのまま現金化できたことになります。封鎖されずに中央に出ることができればそれは利息ということになります。
仮に四隅をすべて小ゲイマ受けから地にすれば52目となり、これを白番が勢力で追いついていくのは至難の業です(棋力が互角で、寄せきって終局した場合にはだいたい30~60目前後の比べ合いになっていることに注意。)。逆に白に三々入りされて隅を地にされ、外勢を消されたらハンデはなくなってしまいます。
プロだって最初の一隅は小ゲイマ受けという棋譜が山ほどあるのは「並べて学ぶ」棋譜集を見ればわかると思います。小ゲイマ受けを誹られて恥じるところは一つもありません。上手の誹りは盤外戦と思っとくのがよいです。
置き碁と棋譜並べについて話をもどせば、プロの棋譜に小ゲイマ受け連発置碁はないので、置碁対策を目的とした棋譜並べはありえません。互先の棋譜から折り合いをつけて並べるということになります。
四子局以上には「天下四目 上」(東京創元社、徐 奉洙(ソ・ボンス))があることは冒頭に述べました。四子局以上については棋譜並べで効率よく勉強するのはちょっと難しいのではないかと思います。
自分自身を振り返ると、四子局以上の課題は以下の順序で上がっていきました。
★四子局以上
・コゲイマ受けを徹底し、四隅を地にすることと中央に出ることを覚える
・一間ばさみは必然性がない限り仕掛けない
・コゲイマ受けに飽きたら、二間高バサミ定石に取り組む
四子局では参考となる棋譜はあまりありませんが、以下を挙げます。
・四子局:「並べて学ぶ定石とヨセ」の第一集(上記の課題とは合致しません。)
二子局・三子局のために専門書がほしい、という方には「置碁のバイブル 下」(東京創元社、 梁宰豪(ヤン・ジェホ))がよいかと思います。置碁としての解説は当然こちらのほうが詳しいです。
自分の三子局の取り組みは、以下でした。
★三子局
・白の星打ちにはケイマガカリして、 スベって二間ビラキ or はさまれたら三々入り の超頻出二定石のどちらかで簡明に済ませる
・白の小目には一間高ガカリ下ツケ引き定石で打ち、手厚く逃げ切ることを覚える
・二連星に内側からかかられたら星の二間高ばさみを徹底する
星の二間高ばさみ定石の良いところはそこそこ手数が長いので大振りな形となり、碁型が決まりやすいことです。
そのため、上手に紛れさせず、簡明な進行に誘導しやすくなります。
また、二連星の内側で二間高ばさみすると背後の星も使って隅も辺も両方有利な形になりやすくなります。
有段者でも意外とご存じない方もおり、その場合は苦労せずに序盤で有利な形勢になることもあります。
二子局、三子局について参考となる棋譜として、
・二子局:「並べて学ぶ布石とヨセ」の第二集 ”ミニ中国流”(解説は「基本布石事典 上」P.100~127)
・三子局:「並べて学ぶ布石とヨセ」の第一集 ”タスキ星” (解説は「基本布石事典 下」P.130~139)
の、各々三局、計六局を挙げておきます。
二子局での取組はだいたい以下の順序でレベルを上げていきました
★二子局
・最初は星打ちで三隅を星でいただき、白の掛りにはコゲイマ受けで対応
・慣れたら小目打ちして一間高ガカリには下ツケ引き定石、ケイマガカリには秀策コスミ定石
・次のステップとして小目打ちして白の掛りを待ち、一間高ガカリ、ケイマガカリどちらも二間高ばさみ
互先
こういったことを考えると置碁と連続性のある(勉強が少なくて済む)互先の序盤戦法は
・互先黒番:ミニ中国流
・互先白番:二連星として、黒の布石に個別対策
・互先白番:黒が二連星を布いたら四手目を小目に構える(「基本布石事典 下」P.16~27)
ということになるのでしょうか。ミニ中国流は小目でありながら、小目定石はあまり知らなくても使えるという利点があります。
置碁で星の二間高ばさみ定石に慣れてきたころ、小目も二間高ばさみ定石を覚えたいと思うようになりました。
星の二間高ばさみ定石は例によって「基本定石事典」とkombiloの組み合わせで頻出の代表定石と基本定石を調べ、それが出てくるプロの棋譜を並べました。7,8型だったと思います。このやり方で要領よく定石を覚えることができました。
星の二間高ばさみを使うと、二連星の内側に掛かられたときに有利な碁形を作れるようになりました。よって置碁では以前よりも序盤でリードできる(大振りな厚みを構築できる)ようになりました。同じような効果を小目についても得られるようになればと思ったのです。
小目の場合は一間高ガカリとケイマガカリの2パターンありますが、まずは一間高ガカリから始めました。つまり村正定石です。村正定石というと難解というイメージがありますが、基本定石事典とkombiloの組み合わせを見る限り、村正回避定石も含めて5型も覚えれば定石としてはおしまいです。それ以外はよく考えれば白黒どちらかが有利な進行になるので、相手との読みあいになります。掛かった側がシチョウ有利の場合は1990年代にいろいろな研究が出ましたが、初段前にはこのような研究は不要です。あっさりと隅をかかった側に譲り、掛かられた側は辺に開いて安定します。村正定石の標準形とシチョウ有利の場合の地の差はおそらく2目程度。アマチュアはそれで困るほど細かい碁は打っていないはずです。シチョウ有利型で小目に構えた側が切りにいかず、かかった側が最後に整形で一手打てば先手が取れます。こっちのほうがよほど大きい。
いずれにせよ、序盤に優勢を築くとゲームを有利に進めることができるのはいかなるゲームにも通じる鉄則です。強くなるには序盤の検討に力を入れるべきでしょう。(もちろん、死活は「新 早わかり死活小事典」位は読み慣れておく必要があります。別に暗記しろとはいいません。ヨセはここまでの棋譜並べである程度のレベルになっているはずです。また「出る順で学ぶ実戦死活」(山下啓吾)や「決定版! 星の死活」(山田晋次)は『並べて学ぶ』棋譜集と相性が良く、棋譜並べと相乗効果が期待できる詰碁集です。)
棋力と序盤構想の関係についてはもう少し研究と考察が必要な気がします。
指導碁
置碁の一つに指導碁があります。プロ棋士に伺ったところでは、指導碁では同時対局数が増えてもプロ側の打ち方が変わる(内容に差が出る)ことはないのだそうです。おそらく置石の数(=段位)によって打ち方がパターン化されている(=指導・確認のポイントが決まっている)のだと思います。その棋士のメソッドに沿って成長していくということでしょうか。
また、プロとの対局を「楽しむ」にはできれば初段以上の棋力があるのが望ましいとのことでした。級位の場合は勉強の側面が強くなってしまうそうです。でも級位者も大歓迎と言われていました。「楽しむ」が何を指すのかはよくわかりませんが、「私が初段と認めたら、星目で気持ちよく勝たせてあげるよ、そのためにはこのパターンは解けるようになってね。」ということかもしれません。
指導碁で勝っている人はなかなかお見掛けしません。初めは出会いガシラで勝たせてもらえても、何回か対局しているうちにこちらの傾向に対応して、だんだんと弱いところがアブリだされてくる感じがあります。それを克服できたら一子強くなるのでしょう。指導碁で棋力を判断するなら、同じ棋士に継続して対局していただき、三番手直り(間隔が空く場合)とか、直近10戦で6勝4敗(間隔が短い場合)とか、ある程度回数を踏まえて捉えるのがよいと思います。九~六子局はモチベーションアップを考えていただけるらしく、そこそこ内容が伴うようになると時期を見て勝たせてもらえるようです。実際に多子局の勝局を拝見するとプロ側がいろいろ段取りした上で快勝させてもらっているのがわかります。
でもプロは(たとえ指導碁であっても)同じ相手には連敗しないように考えて打ってきます。三番手直りも10戦6勝も簡単なことではありません。
多子局の置碁は月に1回もすれば十分と言われるインストラクターの方がおられました。定先か二子局が一番勉強になるとも言われていました。一般のアマ高段者と級位者の多子局では指導が少なく、勝負の面が強くなってしまい、上手の紛れを求める手から下手はいいようにやられてしまう、これは上達のためにならないということでした。本当にアマのためになる指導碁なら上手は本手の連続で一目勝ちを狙ってくるので、下手も自然と本手を覚えるのだそうです。
プロやインストラクターによる指導碁で感想戦がきっちりしている、棋譜がもらえるというのはよい指導だそうです。棋士も人なので五面打ち以上はやはり疲れるようです。日本棋院での指導碁は三面打ち3回戦が基本です(一部4回戦)。きっとこれくらいの対局数が一番効率がよいのでしょう。10面打ちとか千面対局とかはイベント以上のものではないようです。
元県代表の方は今もプロの指導碁を受けているが2週に1回だと言っていました。県代表までいくとプロとの対局でしか刺激が受けられないのかと思いますが、そうでない人はレベル差が大きいので刺激を受けても自分のものにするのが大変かもしれません。それでも対局後の感想戦は今打った自分の手の悪いところを教えてくれますから、三つ話が理解できて、一つ実践できるようになればそれだけで相当強くなれます。
地域の活動
プロ棋士もインストラクターも元県代表もみな言われたこととして、囲碁ファンはお金にシビアな人が多いので、金銭的に効率のよい楽しみ方、勉強方法を提供していくのが大事というのがありました。プロ棋士によると、公民館などでの地域活動によい集団が見受けられるのが囲碁の特徴だそうです。ネット碁よりも近所の集会所・碁会所などの方が遊ぶのにはよい環境かもしれません。趣味を通じて地域の人とつながりが持てるというのはありがたいことでもあります。
雑誌「囲碁未来」には『級位者のための 囲碁未来教室 会場一覧』というページがあり、ここに掲載している教室はかなりやる気のある所と思ってよいでしょう。高段者と「囲碁未来」を読み合わせてお話を聞くだけでも相当な勉強になります。雑誌に頼らずとも近所の公民館・集会所の掲示物や自治体の広報紙などから近所の囲碁クラブを見つけることができます。
ネット碁はいつでも自分と同レベルの対戦相手がいますが、感想戦は対局者双方にコミュニケーション能力が求められます。外国語という意味もありますし、マナーという意味もあります。しかしそれ以上に難しいのは言語化の技術です。自分の対局を振り返って、自分の言葉で表現するのは結構難しいことで、級位の間はこれに苦労すると思います。高段の方ほど対局を豊富なボキャブラリで分かりやすく表現してくれます。
対面対局はネット碁に比べ、コミュニケーションのハードルが低いことが利点の一つです。感想戦の様子を見ていればわかりますが、対局者同士はノンバーバルコミュニケーションで相当な情報量を補っています。ネット碁を続けると碁が荒れる、という話をよく聞きますが、これは感想戦の質の差が理由の一つかもしれません。
元県代表氏も、自分と同レベルから少し強い人がたくさんいる集団に属して対局後に感想を述べあうのが好ましい環境と言われていました。この場合、級位者同士だと本手を学ぶのは難しいですが、下手は上手の手が理解しやすいので勉強になります。上手も少し昔の自分のことを思い出して、自信をもってダメ出しができます。
一般的には頭抜けて強い人が一人いると全体のレベルが上がります。50人以上の集団になると活動全体が活発になるといった効果が出てきます。きちんとした指導者がいる少人数の集団ではきめ細かい(その人にあった)指導を考えてくれます。どういう集団に属するのか、その集団の特徴をどう自分に生かしていくのかというのも強くなるには大事なことかもしれません。
定石
Wiki2chには各ページにアクセスカウンタがついています。これを毎月計測して、どのページのアクセスが多いのかを見ています。「囲碁 棋書購入検討&感想スレ テンプレ」がいつも一番多いのですが、その次に多いのは「置碁必勝法検討スレ/並べて学ぶ定石とヨセ」です。みなさん、たくさんある定石のどれを学べばよいのか、苦労されているのだと思います。
昔、趙治勲が何かのエッセイで「初段を目指すのなら、定石は50も知っておればよい。」と言っていました。その時はその50を教えてくれ、と思いましたが、それはわからずじまいでした。その後、石倉昇が「初段になるには、定石は10覚えればよい」とも言っていましたが、これは初心者向けのトークで、事実ではないな、と思いました。結局、どんな定石を学べばよいのかは誰も教えてくれなかったのです。
KGSの棋譜を分析することで、定石についていろいろなことがわかってきました。簡明な定石を組み合わせて碁形を作る、というアプローチで学ぶならやはり50も知っていれば十分なようです。
必須の書籍は「基本定石事典 上・下」、「基本死活事典」、「三々打込み辞典」の4冊です。先々「辺の戦い辞典」が必要になるかもしれません。
- 「並べて学ぶ定石とヨセ」に出てくる星定石は一通り覚えましょう
- 相手の小目には「並べて学ぶ定石とヨセ」に出てくる一間高ガカリを徹底しましょう
- 難解定石は回避形を覚えましょう
すなわち、自分からナダレ定石、村正妖刀定石、ケイマバサミ定石は仕掛けないようにし
相手がナダレ、二間高バサミ、ケイマバサミしてきたら各々の回避定石を打ちましょう - 相手が小目に構えて難解定石に持ち込む気配を感じたら一間高ガカリはやめて、大ゲイマガカリにしましょう
- 自分の小目にケイマガカリされたら秀策コスミ定石で応じましょう
- 星に両ガカリされたらツケノビする型を覚えましょう(三々打込みの事例で出てきます)
- 星に一間受けへの三々打ち込み(三型あります)を覚えましょう
- 星に大ゲイマ受けへの三々打込み(二型あります)を覚えましょう
- 星にコゲイマ受けへの三々打込み(コウ型と生き型、隅への浸食を最小限にする型の三型あります)を覚えましょう
- 目外し・高目・三々についてはとりあえず一型だけ覚えましょう
これを基準にここのWeb Pageに出てくる定石を選べばおよそ45、6型になります。それ以上の定石は対局に出てきたらお付き合いで覚えればよいです。たぶん初段を目指す(とりあえずどんな時でも四隅を定石型に持ち込める)のに必要な定石はこれくらいです。自分で碁罫紙に書き出してみるとかなり満足感があるはずです。
関連項目
『はじめて棋譜並べに取り組まれる方へ』(一つ上に移動)
『囲碁・オセロ板』(トップページ)
『頻出三々定石と死活』(同レベル)
『次点となり、取り上げなかった定石たち』(同レベル)